勉強メモ: 心不全とは?

※本記事は個人の勉強したメモであり、誤った情報を含む可能性があります。また、特定の診断・治療行為を促す、または否定するものでもありません。また、所属する組織とは何の関係もありません。

心不全とは

  • 心不全は、心の構造的・機能的異常に伴って生じる臨床症候群であり、単一の病名(単一疾患)ではない(多様な原疾患や病態を包含する概念)。
  • 全身の各臓器の酸素需要に対して、心臓が十分な血液を共有できない病態(症候)である。
  • いくつかの分類がある。
    • 臨床経過による分類: 急性心不全、慢性心不全※ ※別の病態ではなく連続した臨床経過
    • 主な病態による分類: 収縮不全、拡張不全
    • 左室収縮能による分類: HFrEF、HFpEF、HFmrEF
    • 臨床像による分類: 右心不全、左心不全
  • 心疾患の終末的な病態であり、ほとんど全ての心疾患が心不全に陥る可能性を持つ。
    • 心不全の原因として、高血圧虚血性心疾患弁膜症心筋症が多くを占める。
  • 血液検査で、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)やNT-proBNPが上昇することが多く、診断補助や重症度評価に使用される。
  • 心エコーで、左室収縮能低下(左室駆出率LVEF低下)、左室拡張能低下、左室機能低下、弁膜症などがみられる。
  • 日本の新規心不全入院患者数は2025年に21万人、2040年には25万人と予測されている。慢性心不全を含めた患者に関する正確な罹患率の推計は困難だが、2030年には130万人に達するという予測もある。

心不全の定義の概念図(2025 年改訂版 心不全診療ガイドラインより)

心不全ステージの治療目標と病の軌跡(2025 年改訂版 心不全診療ガイドラインより)

左心不全と右心不全(臨床像による分類)

  • 左心不全が主体で、右心不全は多くの場合左心不全に続発する。肺高血圧・肺疾患・先天心疾患などに起因する単独の右心不全もしばしば見られるため、臨床的評価で原因を明確化することが重要。
  • 左心不全は、心拍出量の低下と、うっ血をきたす。初期には労作時の息切れがみられるが、進行すると安静時の呼吸困難がみられる。
  • 右心不全は、心拍出量の低下と、うっ血をきたす。

代償機構とは

  • 心不全では心拍出量低下に対して体が短期的に血圧と臓器灌流を維持しようとする反応(短期代償)と、長期的に心構造・機能を変化させる反応(長期代償)が働く。これらは初期には有利に働くが持続すると心機能をさらに悪化させる。
  • 心拍出量が低下したとき、主に交感神経系、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系、バソプレシン系が亢進し、血圧の維持に働く。
  • 長期的に代償機構が働くと、慢性的に前負荷と後負荷が増加し、弱った心臓が耐え切れなくなってうっ血(心不全症状)、心拍出量低下が生じる。結果として、新機能はさらに低下し、心不全を進行させる悪循環をきたす。
  • 容量負荷、圧負荷の増大に対して心筋は適応しようとする。これを心筋リモデリングと言う。

心筋リモデリングとは

  • リモデリングとは、負荷や障害を受けた細胞が機能障害を伴って修復(再構成)されることを言う。
  • 慢性的な容量負荷の増大に対して遠心性肥大(心拡大)を呈する。
  • 慢性的な圧負荷の増大に対して求心性肥大(心肥大)を呈する。
  • 心筋リモデリングは短期的には心拍出量や血圧を維持するが、慢性的に容量負荷と圧負荷が増大するような心不全では、最終的に遠心性肥大(心拡大)を呈して収縮力が低下する。

HFrEF(Heart Failure with reduced Ejection Fraction)

  • 左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)とは、左室駆出率(LVEF)が40%未満まで低下した心不全のことで、収縮不全が主体である。
  • LVEF低下で表される左室収縮機能障害のみならず拡張障害も伴うことが多い。
  • HFrEFの原因は、非虚血性心筋症と虚血性心筋障害に大別される。日本のHFrEFの主な原因として、かつては拡張型心筋症など心筋疾患の比率が高かったが。次第に虚血性心疾患が原因の心不全の占める比率が高くなってきている。これらの疾患で、交感神経系やRAA系などの神経体液性因子が賦活化され、心筋リモデリングが生じ、心不全を進行させる悪循環をきたしているため、これを抑制し、予後を改善することが治療の目的となる。

HFpEF(Heart Failure with preserved Ejection Fraction)

  • 左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)とは、左室駆出率(LVEF)が50%以上に保たれた心不全のことで、拡張不全が主体である。
  • HFpEFの原因は、心房細動(AF)高血圧、冠動脈疾患などの心血管疾患に加え、糖尿病慢性腎臓病(CKD)、貧血、COPDなどの非心疾患も含まれる。HFpEFは心臓、血管、肺や骨格筋などの非心血管系の異常が混在する複雑な病態である。
  • HFpEFの薬物療法は、これらの原因疾患の治療を基本とし、症状を軽減する治療や、心不全の増悪に結び付く合併症に対する治療を行う。

参考、引用元

※本記事は個人の勉強したメモであり、誤った情報を含む可能性があります。また、特定の診断・治療行為を促す、または否定するものでもありません。また、所属する組織とは何の関係もありません。

タイトルとURLをコピーしました