序文
目の前の家族が、あるいは自分自身が、もし認知症になったら――。そう想像するだけで、胸がきゅっと痛む方も多いのではないでしょうか。けれど実は、その“怖さ”や“悲しさ”の奥には、希望や支え合いの力が隠れているのかもしれません。
本書『ボクはやっと認知症のことがわかった 自らも認知症になった専門医が、日本人に伝えたい遺言』は、認知症を数多く診てきた名医・長谷川和夫先生が「自らも認知症」という立場で綴った、魂に響く一冊です。人生の終盤において大きな変化を体験しながら、どうやって心を保ち、家族や社会とつながりを持ち続けていくのか。まるで穏やかな対話をするように語られる言葉に、思わず泣きそうになる方もいるでしょう。
なぜ今、この本がこんなにも注目を集めているのか。その理由を知れば、あなたもきっと手に取らずにはいられなくなるはずです。
要約
- 「専門医だからこそ分かる『心の変化』のリアル」
長谷川先生は、長年にわたり認知症の研究と診療に携わってきたパイオニア。それが自らの病を診断されたとき、これまでの知識だけでは説明しきれない“心の揺れ”を味わうことになります。専門医でありながら一人の当事者として、恐れや不安が募るなか、それでも生きる喜びを見いだそうともがく。そのプロセスが、実に克明に描かれています。 - 「家族や周囲への想い――“支え合う”関係の大切さ」
認知症と聞くと、何かを“忘れる”病気というイメージを持ちがちです。けれど、長谷川先生が語るのは“思い出を大切にすることで、心が通い合う”ということ。認知症の方が“見えなくなった部分”ではなく、“今ある部分”に焦点を当てることで、家族との絆はより強くなる。先生が紡ぐエピソードからは、人と人とのつながりがどんなに大切か、身をもって教わることができます。 - 「日本人に贈る“遺言”――生き方そのものを問い直すメッセージ」
先生は「遺言」という言葉を使って、人々が認知症に対して抱く誤解や偏見を取り払おうと必死に呼びかけます。これはただ医療的なアドバイスを超えて、“自分らしく生き抜く”という人生哲学でもあるのです。読み進めていくほどに、“まだできること”や“周囲とつながること”への意欲が湧いてきます。
おすすめのポイント
- 自分や身近な人の未来を、前向きに考えられる
「もし認知症になったら、自分はどうする?」「家族はどう接すればいい?」そんな不安は尽きません。でも本書を読むと、「怖さ」だけではなく、「理解し合える可能性」が見えてきます。認知症は人生の終わりではなく、“新たに生きる”ための一歩にもなりうる。そう背中を押してくれる点が、この本の最大の魅力です。 - 日常に取り入れやすい“具体的なヒント”が豊富
専門医が当事者になったからこそ見えてきた、小さな工夫や心がけが丁寧に紹介されています。たとえば記憶の混乱をやさしく受け止める言葉かけや、散歩や音楽との付き合い方など。自分だけでなく、親や祖父母と過ごすときにもすぐに実践できるヒントが詰まっています。 - 何歳になっても学び続け、成長できる実感が得られる
本書は「年齢を重ねても人は変われるし、学べる」という希望を示してくれます。認知症を正しく知ることは、自分の人生をもう一度愛し直すきっかけにもなるでしょう。どんな年齢でも新しい知識や喜びを吸収できる、そんな前向きな人生観が伝わってきます。
結論
認知症という言葉を聞くだけで、重たく沈みがちになってしまう私たち。しかし、この本は「病気になること=不幸」という先入観をやさしく覆し、新しい視点を授けてくれます。長谷川先生の言葉は、まるでそっと手を差し伸べてくれるような温もりをたたえ、読むほどに自身の心が軽くなるのを感じられるはずです。
あなた自身や大切なご家族の未来を、より希望あるものにするために――。ぜひこの『ボクはやっと認知症のことがわかった』を手に取ってみてください。読み終わった頃には、認知症とともに生きる勇気と「まだやれることはたくさんある」と思える力が、きっと心に宿ることでしょう。いま、この瞬間に知っておくことこそが、いつか訪れるかもしれない不安を照らす、あたたかい灯火になるのです。
どうか、この灯火をあなたの手でつかんでみてください。きっとその先には、また新しい明日が待っています。